それは、なんとなく地に足が着いていないような毎日を過ごしていたある日のことだった。仕事は適当にある。しかし、なんだか何かに流されているような、気持ちに張りのない毎日に、「こんなときは土に触れることが大切だ!」といつもの不思議な気分転換行動に出ることにした。そこで思いついたのが、家の庭に何か果樹を植えようということ。早速、車で15分ほどの果樹園へ向かった。外見は小さな果樹園には、熱帯植物・・・という看板。以前植木市で見かけ、果樹について熱く語っていた具志堅さんの果樹園だ。
沖縄の夏は、とにかく暑いというか熱い。そんな中、50代半ばか60歳手前くらいに見える具志堅さんは、楽しげに果樹の手入れをしていた。「いや~暑いですね」と言いながら実は果樹を探しているということを伝えると、植木市で会ったときのように、一つひとつ我が子のことを語るように果樹の説明をし始めた。「この人は熱いなあ。よっぽど木が好きなんだろうな」そんなことを思いながら、「蚊が多いですね」と立ち向かってくる蚊たちと戦いながらついて歩く僕に、「蚊なんか平気だよ」と具志堅さん。確かに、蚊は具志堅さんを攻撃していない。いや、攻撃しているようだが具志堅さんは気にもとめていないようだ。聞くと、ハブにも咬まれたことがあり、今はもう大丈夫というから、抵抗力が普通ではないのかも?
しばらくして、「仕事は何をしているの?」と具志堅さんが尋ねた。
「はい、あの~コンサルティングのような仕事です。特にリーダーシップなどについて企業とか学校とかで伝えています。」と私。
「へ~、いい仕事をしているね。今、とても必要な仕事じゃないか。で、沖縄でもやってるの?」
「いえ、沖縄ではやってないですね。」
「どうして?」
「んん~、地元でやるというのはちょっと自分の家族を前にしてやっているようで恥ずかしいというか恐いというか・・・。」
もぞもぞとした弱気な口調で話す私に、具志堅さんは首をかしげながら、「恐い?」「恥ずかしい?」「あんたは幾つ?30代?40代?」
「あ、30代です。」
「30代、40代は、一番力が出せるときだろ。何もなくても両肩から1億円ぶら下げて歩いているようなものだよ。そんなときに恐いだの恥ずかしいだのと言うのは情けないよ。そんなのは、ただやる気がないだけだよ。」
「あ・・・、そうですよね・・・。」つぶやく私。
「やってみなさい!何も恐くないし、心配することもない。警察も政府も何も怖くない。使えるものは何でも使ってやってみなさいよ。新聞でもなんでもドンドン使えばできるよ。」
突然の強いことばに驚きながら「そうですね。やってみないと成功するか失敗するかわからないですからね」と私。するとすかさず、「失敗は無い!失敗はないんだよ!なんでもやってみなさい!」「いいものを持っていると思うから言っているんだよ。若いのに情けない。やる気がないよ。」と一喝!
以前にも植木については話を聴いたことがあるものの、具志堅さんとのこんな会話は初めて。いきなりの叱咤激励に、「ありがとうございます。今日はなんだかいい話が聴けて来てよかったです。・・・で、取り敢えず選んでおいたあの果樹を買って行きたいのですが・・・。」すると、「果樹なんか育てている場合じゃないだろう。自分のやるべきことをしてからまた来なさい。」と具志堅さん。そして更に、「僕もまだまだやれるよ。声をかければ人を集めることくらいは出来るから、何か出来ることがあればまた来なさい。」そして最後にもう一度とどめのことば「ほんと、やる気がないんだよ。情けない!」
「ありがとうございます。また、来ます。」と言って頭を下げ、車のハンドルを握りながら、さっきまでのやり取りが思い出されて思わず笑ってしまった。「そうか、やる気がないだけか・・・」張りのないもやもやした気持ちは、どこかへ吹き飛ばされていた。
それから、数ヶ月の間に私の周りはこれまでの生活から一変していた。具志堅さんに叱咤激励されてから、自分なりにまず何をすべきかを真剣に考え始めた。一番最初に心に浮かんだのが、これまでに書き溜めていたリーダーシップ関連の本の出版。そして、自分主催の研修や講演などの沖縄と東京での開催。「木なんか育てている場合ではない」という具志堅さんのことばが耳元でこだまする中で、具体的な計画を立て、実際に原稿の編集を進め、更には出版社との出版契約。様々なことが次から次へと動き出した。
仕事の方も全く予想もしなかったような様々な出来事が重なって、不思議と予定していたことがことごとく実現していく。実際に本「実践リーダーシップ『リーダーは君だ!』」を出版し、沖縄・東京での出版記念講演、自分主催の研修の拡大。ラジオ出演。一つひとつ思っていたことが、実現していく。ラジオ「おはようインタビュー」に出演した際、インタビュアーの方に「新里さんは、どのようなきっかけでこのような本を書いたのですか」と尋ねられ、果樹園での出来事を話すと「ああ、それは具志堅さんのことでしょ。沖縄で熱帯果樹を広めた草分け的な存在で有名な方ですよ。やはり会うべくして会ったのですね。」とのこと。やはり具志堅さんは、ただ者ではなかったのだ。
出会う人も出会う企業も、そして数々の書籍も、出会うべくして出会っているようなそんな不思議な感覚を覚えながら、落ちついて考えてみると、自分自身が具志堅さんに会ったころ、他の方にも「もっと思い切ってやってみなさい!あなたは出来るよ。」と言われたような。いや、確かにそう言われたことを思い出していた。人間、そういうときがあるのかもしれない。そんなときに、自分から何か小さなことでも、実際に動き出してみる。そこから道が開けていくような気がする。
改めて、具志堅さんそして出会った多くの方々に感謝!感謝!
ちょっと長い文になってしまいまして、すみません!
いろいろ書きましたが、人生、さまざまなことがありますし、いつもやる気に満ちて頑張れるわけではないかもしれませんね。勿論そんなときは、少し休む必要があるのかも知れません。でも、少しでもやる気が出てきたら、すばやく実行!きっと道は開けていく、私は、そういう気がしています。